どんな病気?
肥満とメタボリック症候群の増加に伴い非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease : NAFLD)は年々、増加しています。NAFLDはアルコール性肝障害を来さない少量飲酒者、あるいは非飲酒者に発症する脂肪肝の総称です。現在、我が国に2000万人程度と推測されています。そのうち、1-2割程度が脂肪肝に肝炎を合併する非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis : NASH)となり、さらに炎症が続くと線維化が進行し肝硬変や肝がんに進展するといわれています。NAFLD発症の原因として内蔵脂肪の蓄積およびそれに伴うインスリン抵抗性があり、肥満や糖尿病との関連が指摘されています。また脂質異常症や高血圧、心血管病変を合併する率が高いと言われています。
検査は?
NASHの確定診断は、肝生検による病理組織診断であり、病理学的に特徴的な所見を確認します。しかし肝生検は侵襲的な検査であり診断のばらつきがあることが問題となっています。採血検査ではAST、ALT、γ-GTPの上昇を認め、脂肪肝の確認は腹部超音波検査やCT検査で行います。最近ではNASHにおける肝臓の線維化の評価(肝臓の硬さの評価)を腹部超音波検査やMRIによるエラストグラフィやTransient エラストグラフィ(フィブロスキャン)を用いて非侵襲的に行うことができるようになってきています。
治療は?
治療における第一の選択肢として食事療法および運動療法による体重減少が挙げられます。特に7%以上の体重減少により肝脂肪化や肝細胞の炎症が有意に改善することが証明されています。薬物治療としては抗酸化剤(ビタミンE)や糖尿病治療薬(ピオグリタゾン、SGLT2阻害薬)が有効であるという報告もあります。また現在、欧米を中心に様々な治療薬について治験が行われており、今後治療について選択肢が広がる可能性が考えられます。
担当医からの一言
病気を正しく診断し病状の進行を食い止めることが大切です。ご心配なことやご不明なことがあれば遠慮なくご相談ください。
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