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杏林大学医学部 第三内科学教室 消化器内科
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膵炎

どんな病気?

 膵炎は急性膵炎と慢性膵炎に大きく分けられ、男性はアルコール、女性は胆石症が原因で発症する頻度が高いと言われています。また、最近では自身の免疫異常によって生じる自己免疫性膵炎も注目されるようになってきています。急性膵炎は、消化液である膵酵素が膵組織自体を自己消化し、様々な臓器に障害を及ぼす病気です。症状としては、上腹部痛から始まることが最も多いとされています。重症の場合、一時的に人工呼吸器や緊急透析等の集中治療を要する事があります。死亡率10-30%ともいわれる重篤な事態であり、適切な医療施設で対応することが必要になります。さらに、膵周囲へ炎症が波及することにより胆道が狭くなったり(狭窄)、壊れた組織に液体が溜まってしまった仮性嚢胞という状態を引き起こすことがあります。慢性膵炎は、長期にわたり膵臓で炎症が繰り返すことによって、膵臓の機能低下を引き起こす病気です。慢性膵炎も上腹部痛が主な症状ですが、進行してしまうと、むしろ腹痛は軽減し、一方で、膵臓の機能低下により、脂肪便、体重減少、下痢、糖尿病などを引き起こします。また、膵臓に石灰化がみられる膵石症や膵癌の合併が多いことにも注意が必要です。自己免疫性膵炎は、全身性のIgG4関連疾患と呼ばれる病気の中で膵炎を生じるもので、血液中のIgG4が増え、膵腫大がみられることが特徴的です。

検査は?

 急性膵炎の診断基準として、①上腹部痛、②血中・尿中の膵酵素上昇、③画像検査での急性膵炎の所見、の3項目中2項目を満たすと急性膵炎の診断となります。身体所見や採血・画像検査から軽症あるいは中等症、重症と判断し、適切な治療を速やかに開始します。慢性膵炎は採血や尿検査をはじめ、CTやMRI、最近では超音波内視鏡などの画像検査を行い診断します。これらの検査で診断が確定しないときには、内視鏡検査で膵臓内の膵管の状態を確認したり、膵臓の組織を採取する検査(超音波内視鏡下穿刺生検)を行う場合もあります。

治療は?

 急性膵炎は適切な初期治療が重要であり、大量の点滴や膵臓の炎症を抑えるための蛋白分解酵素阻害薬、重症例では感染症を予防するための抗菌薬等の投与を行います。重症例では、食事摂取に関しては感染予防対策として、経腸栄養をむしろ48時間以内の早いタイミングで始めることが推奨されており、膵臓に血液を送る血管(動脈)に直接、薬剤を投与する治療方法も検討します。また、多臓器に障害を及ぼした場合には、透析や人工呼吸器等が必要となる場合もあります。また、急性膵炎改善後に膵周囲に形成された仮性嚢胞に感染を生じた場合には、感染した内容物を流し出すために内視鏡的膵管ドレナージ術や超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ術といった処置を行います。
 慢性膵炎は、長期的な視野で治療を考える必要があります。アルコール飲用者では禁酒が必須です。その他にも、腹痛が強い場合の脂肪制限など生活指導や栄養指導を行います。薬物療法としては、蛋白分解酵素阻害薬、鎮痛薬、消化酵素補充薬が多く用いられます。また、慢性膵炎では、膵石や上述の仮性嚢胞や胸水、胆道狭窄を起こすことがあり、内視鏡での治療を行う場合もあります。内視鏡治療が困難な場合は、外科的な手術を行うことも考慮します。
 自己免疫性膵炎は、ステロイド治療が基本となります。治療前には糖尿病や膵癌が合併していないか調べておく必要があります。

担当医からの一言

 急性膵炎は発症後、速やかに治療を開始することが重要となりますので、症状があったらすぐに医療機関を受診するようにしてください。一旦落ち着いた急性膵炎や慢性膵炎、自己免疫性膵炎では外来通院、内服に加え、各種検査で膵臓の状態や合併症の有無(糖尿病や膵癌など)についても定期的に見ていくことが大切です。ご心配なことやご不明なことがあれば遠慮なくご相談ください。




急性膵炎

膵臓周囲に炎症が波及している。


慢性膵炎

膵全体が石灰化している膵石症を認める。


自己免疫性膵炎

膵臓が腫大している。


<当科で診療することの多い消化器疾患について>