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杏林大学医学部 第三内科学教室 消化器内科
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先輩からのメッセージ

OBの先輩からのメッセージ Vol.004

内閣官房 新型コロナウイルス感染症対策推進室 大島康太先生

現在多方面で活躍される医局OBの先生方をご紹介します。
第4回は内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室で現在ご勤務中の大島康太先生です。

皆さん初めまして。2018年に杏林大学第三内科学教室(消化器内科学)に入局し、3年間勉強させていただいた後、2020年4月から厚生労働省へ医系技官として入省しました大島と申します。現在は内閣官房に出向しており、新型コロナウイルス対策推進室で働いております。この臨床とは少し変わった道を歩むにあたっての経緯や、現在の職務を簡単にお伝えできればと思い、お話させていただきます。
医学部、研修医で日々頑張っておられる皆様に少しでも自分の進路を考える一助となれば幸いです。

〇医学部時代(杏林大学)

バングラデシュのアグラサーラ孤児院でのフィールドワーク

 医学部では、幅広く医療や社会問題を学びながら、多くの人と交流を持ちたいと考え、 学内では統合医療研究部やESSでは部長、副部長として勉強会等を開催し、学外では、学生団体WINGs(Working with Next Generation;こどもと共に学ぶ会)で代表として、途上国支援のフィールドワーク(バングラデシュやフィリピンなど)や貧困問題、教育問題などの勉強会、合宿の開催等を行っておりました。
その他、IFMSAやjaih-sという医療系の学生団体で勉強会等に参加し交流をする傍ら、 自立生活サポートセンター"もやい"や、新宿での生活保護の方への炊き込み、東日本大震災後の福島での復興支援ボランティアなどの活動も行ったりしておりました。
 これらの活動を通じて、世界ではもちろんのこと、豊かに見える日本の中にも苦しんでいる方がたくさんおり、その方々を助けようと、色々な方面から必死に活動をされている方々のお話も聞きながら、自分は医師となった後、どのような道にすすむか考えておりました。

〇研修医から医局時代

 大学卒業後は、杏林大学で初期研修を行いました。患者さんの命を預かる「臨床の現場」は、将来を考える余裕などないほど大変でしたが、激務の中でも優しく指導してくれる頼れる先輩方と働くことは楽しかったですし、患者さんに直接感謝される仕事はとてもやりがいがありました。
 その後、様々な科を経験する中で、全身を診つつ、侵襲低く診断・治療ができる内視鏡にも魅力を感じたため、第三内科(消化器内科)に入局しました。
 病棟患者さんをしっかり診て、内視鏡などの検査を教えてもらい、当直で救急外来を学ぶ中で大変な場面は多々ありましたが、先輩方に支えてもらいながら乗り越え、一歩一歩学びを蓄積していきました。入局して年次が上がるごとに責任も増しましたが、治療方針含め、病棟で任される割合もふえていき、とても充実しておりました。
 ただ、段々と心にも少し余裕が出てくると同時に、自分の専門を決める段階で、いろいろな迷いも出てきました。将来自分は消化器の中で何を専門にするのか、また自分の専門を決めたら大学院へ行き、基礎研究は学ぶのか。海外留学をどうするのか。もしくは、少し視野を広げて、厚生労働省や国際機関といった道に行くのか。
 そこで、学生の時に関わっていた活動を行ったり、友人・先生に連絡を取ってみました。それをきっかけに、学生の時にバングラデシュで出会った子供たちの笑顔、真冬の新宿で、炊き出しのご飯を渡すととても感謝した方の顔、未だ解決されない日本・世界の社会問題について皆と語り合っていた学生時代の時のことを思い出しました。そして、今は改めて自分のできることを考える時期なのではないか、そう思うようになりました。そこで、医療含めた日本の社会や政策に携われる、厚生労働省で働いてみたいと思うようになりました。
 ただし、消化器内科の一員として、この決断をするのは大変迷いました。まだ自分の技術が確立していないなかで臨床から離れていいのか、医局を離れることで迷惑をかけないか、新しい分野で自分が適応できるのかなど長い期間悩みました。しかし、教授や医局の皆様に快く承諾頂けたこともあり、厚生労働省の医系技官になることを決意しました。

学生の頃からお世話になった楠原先生の内視鏡指導

先輩・後輩皆大好きな医局でした

〇厚労省に入省

 2020年4月。私含め、新米の医系技官は、まずはコロナ対策本部に配属され、仕事が始まりました。その年はご存じ、コロナウイルス感染症が流行し始めた年でした。臨床現場にいるときは、「国は大変なことになっているかもしれないね。」とどこか少し他人事のように話しておりましたが、体育館のように広い一室で、鳴りやまぬ電話、走り回る人々、はやくしろと響く怒声。コロナ対策本部は未曾有の緊急事態で戦場と化していました。
 私は、検査や治療薬関連の部署でした。初めは電話での問い合わせの対応や会議の書き起こしから始まり、その後、政策について議員の先生に説明したり、国会答弁を作成することを見よう見まねで学んでいきました。臨床とは全く別の新しい仕事や、目まぐるしく変わる新型コロナウイルスの情勢に翻弄されながらも、それに負けじと様々な対策を進めていく流れを間近で見られたことは、とても勉強になりました。
 8月からは、がん・疾病対策課に移り、がんやアレルギー疾患等の協議会(第3期がん対策推進基本計画の中間評価)やがん研究(厚労科研やAMED)を担当しました。知らないことも多く、今までがんの最新の治療法を論文で学ぶことはあっても、恥ずかしながら、あまり「がん」の政策をどうするかという視点で考えたことはあまりなかったことを痛感しました。
 2021年7月からは、内閣官房へ出向し、新型コロナウイルス感染症対策推進室に異動となり、再びコロナ対策にかかわる機会を得ました。今回も目まぐるしく変化する状況に流されながらも、以前よりは少し余裕が出てきていたので、国の政策について自分でも考えながら仕事を行うように心がけています。
 働けば働くほど、政策の進め方や、情報収集の仕方、情報の伝え方など、知らないことがあまりに多くあるという現実を目の当たりにし、そのたびに必死に仕事を覚えていくという状況です。大変ではありますが、それがこの国の人々のためにつながると思うと、やりがいはとてもあります。中長期的な視点は時々思いだしながら、その時々で自分のできることを最大限に行う。その繰り返しの先に、自分の成すべき道があると信じて、日々を過ごしています。

医系技官パンフレットより。新たに出会った頼れる入省同期。

〇学生や研修医の皆さんへ

 学生の時は、ぜひ自分の興味のある活動に参加してみて、色々な人と接点を持ってみることをお勧めします。それでも、研修医になるとき、また研修医が終えた後、どの病院のどの科に行こうか、どの医局に入ろうか、その後どうしようかと悩むと思います。
 その際、臨床の現場では仕事に忙殺され、自分の将来を考える余裕もなく、不安を感じることが出てくるかもしれません。そんな時は一度立ち止まり、自身のこれまでを振り返ってみたり、どのようなことに関心があるのかじっくりと考えてみるとよいかもしれません。厚労省に入ってから気づきましたが、全国の先生方も自身のキャリアを悩んでいる方は意外に多いです。
 自分の1度きりの人生、しっかり悩みぬいたうえで、自分の満足いく形での自分の生き方を見つけてほしいと思います。何か私で協力できることがあれば、遠慮なくご相談ください(ご連絡は医局の秘書さんにお願いいたします)。

〇最後に

 私は、第三内科(消化器内科)に入局したことで、尊敬できる先輩方に臨床技術や患者さんに寄り添うことの心構えを学びました。また、厚労省に入省したことで、新たな環境や人との出会い、国という大きな目線で政策を考え、臨床とは違う観点で人への寄り添い方を学んでおります。このような環境で働くことができているのは、迷っているときに背中を押してくれた教授や医局の諸先輩方のおかげです。本当にありがとうございます。まだまだ未熟者ではありますが、目の前のことに全力を尽くしながら、引き続き人のために自分が成せることについて考えていこうと思いますので、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。


・OBの先輩からのメッセージ Vol.004「内閣官房 新型コロナウイルス感染症対策推進室 大島康太先生」
・OBの先輩からのメッセージ Vol.003「つつじヶ丘ホームドクタークリニック 畑 英行先生」
・OBの先輩からのメッセージ Vol.002「聖路加国際病院 中村健二先生」
・OBの先輩からのメッセージ Vol.001「やまぐち内科眼科クリニック 山口康晴先生」