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杏林大学医学部 第三内科学教室 消化器内科
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教授挨拶

第二期3年間(2019-2021)の目標と課題
Passion,Professionalism,Imagination

久松 理一

久松 理一

この4月から新年度を迎えます。まず、日頃よりご指導いただいているOB・OGの先生方に感謝申し上げます。また臨床、研究、教育に協力してくれている医局員の皆さんに感謝します。

さて、2015年4月に赴任し、2016年から教室主任を任され、2016-2018年を第一期3年とすれば2019−2021年は第二期3年となります。

【基本方針10か条】

  1. 「医は仁術」、これは不変である
  2. 考える医療をすること、医学はまた科学でもある
  3. 井の中の蛙になるな、世界は広い、外に出ること
  4. 挑戦すること、変わることを恐れない
  5. 限界を自分で決めない
  6. 仲間を大切にすること
  7. 最後までやり抜き、形に残すこと
  8. 異種格闘技はしない、勝負するなら同じ分野で!
  9. 一人で無理をするな、仲間に助けを求めなさい。
  10. 自信を持ちなさい、そして母校を愛しなさい

【学術活動について】
 症例報告とその論文化に関して、医局員の皆さんは常日頃から耳にタコができるほど叱咤激励されているはずです。症例報告については医局全体でその意識は高まってきていますが課題は論文化です。論文にして初めて症例報告は完結するということを指導者の先生がまず再認識して欲しいと思います(指導者としての評価項目の一つです)。
 第二期の途中ですが、下記に示す通り、症例報告や臨床研究(多施設共同研究を含む)が論文化されています(これら以外にもNew England Journal of Medicineなど共著者に含まれている論文はたくさんあるが、それについてはあえて触れない)。これを見てみると、original articleが土岐、斉藤、林田、そして久松から発表されており、case reportは大野、小栗が論文化しています。original articleを発表した3人(久松を除く)は各グループの指導的立場にある人たちなので、たいへん頑張ったと思います。ただ単発で終わってしまってはいけないのでグループ全体を把握し、継続的に活動していってほしいと思います。さらに、現在、大野がoriginal articleを投稿中であるし、渡辺や桜庭も論文執筆に入っているはずです。新たに加わった松浦、三好も後輩の指導だけではなく、ぜひ筆頭著者として活躍して欲しいと思います。一方、症例報告の論文化が2本だけというのは大いに寂しい。若手の学会発表に関してはよく面倒を見ていると思いますが、そこで止まってしまっています。指導する先生の意識改革を求めたいところです。
 学会発表については第一期よりも明らかに主題発表が増えてきていると思います。一方で、発表だけで終わってしまっている場合もあり、その点は残念です。臨床研究というのはクリニカルクエスチョンを解決するために行うものですから、何を知りたいのか、何を明らかにしたいのか、それはどのくらい社会にインパクトのあることなのか、を常に考えて欲しいと思います。特に各グループのリーダーは若手を含めて自分たちのグループをどこへ進めていくのか、明確なビジョンを示すべきです。船頭が考えていなければ船は路頭に迷うだけです。

*第二期の論文(杏林が筆頭もしくは責任著者になっているもののみ. 2019年−2020年3月9日現在)
Original article

  • Hayashida M, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2020 Jan 30.
  • Saito D, et al. Digestion. 2019 Sep 6:1-9.
  • Toki M, et al. J Infect Chemother. 2019 May 23.
  • Hisamatsu T, et al. J Gastroenterol. 2019 Oct;54(10):860-870.
  • Hisamatsu T, et al. J Crohns Colitis. 2019 Sep 19;13(9):1097-1104.

Case report

  • Ohno A, et al. Endoscopy. 2019 Jul 1.
  • Oguri N, et al. Clin J Gastroenterol. 2019 Aug;12(4):325-329.

【臨床について】
 杏林の消化器内科は多摩地区を中心に東京西部の医療、特に高度先進医療と救急医療を支えています。今や東京西部の消化器系医療は杏林無しでは成立しないところまで来ています。医局員の皆さんは本当に頑張ってくれていると思います。OB・OGの先生方もその点は現役医局員たちを褒めてあげていただければと思います。胆膵班のERCP関連技術、消化管治療班のESD実績は東京西部の基幹施設として相応しいものになってきていると思います。肝臓班もラジオ波治療をより一層強化するために外部指導者を招聘し頑張っています。炎症性腸疾患については患者数も増え、念願のInterdisciplinary Center for Inflammatory Bowel Disease, ICIBD (炎症性腸疾患包括医療センター)を開設しました。消化器外科、小児科・小児外科、産科、看護スタッフ、栄養士も参加して患者中心の医療を展開していこうという主旨でinterdisciplinaryという言葉を用いました。ロゴもinterdisciplinaryの意味とヒトを表現したiの文字が杏林のロゴと組み合わさったお洒落なものになっています(三好学内講師デザイン)。今後は院内・院外にむけて教育セミナーなどを定期開催して地域のIBD診療の発展に貢献したいと考えています。
 一方で課題も残されています。各分野において、当然ですが、すべての臨床的課題が解決されているわけではありません。我々はガイドラインに沿って治療するだけではダメです。ガイドラインを作成するための新たなエビデンスを構築することこそが我々の使命です。たとえば、消化管治療班は新たなESD治療手技の開発やピロリ除菌後時代の新たな課題にチャレンジしなくてはなりません。胆膵班は3D画像技術を一般診療に応用するところまで発展させERCP関連手技に革命を起こしてほしいと思います。肝臓班はラジオ波治療の技術を高めるとともにHCV撲滅後の肝疾患にも目を向けてもらいたいと思います。小腸大腸班はICIBDを基盤として、日本のIBD診療を担っているぐらいの自負でやってほしいと思います。治験を支え、多施設共同研究にも積極的に参加しエビデンス構築に寄与してください。そのためにも個々のIBDに対する知識、診断能力、治療技術をスキルアップすることが必要です。

【教育について】
 教育については桜庭助教がものすごいエネルギーを使って学生教育を支えてくれていますし、兄貴・姉貴分の先輩たちが研修医や若手の面倒を本当に良く面倒を見ていると思います。他大学の学生や他施設の初期研修医の見学の際、親しみやすい、アットホームな雰囲気、という感想をよく聞きます。診療科長としては本当にうれしいことです。教育というのは研究や臨床と違って成果が数値で出るものではありません。少しずつ改善されてきているものの、教育業務に対する評価(対価)について日本はまだまだ遅れています。しかし、教育こそが未来の消化器内科あるいは杏林大学医学部の方向性を決めるのです。質の高い教育システムを構築した診療科、病院、医学部が勝ち残るのだと思います。難しい課題ですが、消化器内科の学生教育(講義やBSL)、初期研修医教育、専攻医教育をより質の高いものにしていかなければなりません。教育にかける労力への評価システムと効率性を考慮したカリキュラムの構築がポイントでしょう。皆でアイデアを出し合ってより良いものにしていきたいと思います。

【女性医師へのサポート体制について】
 消化器内科にもだいぶ女性医師が増えてきました。出産してママさん医師として頑張っている人、新婚生活と医師業務の両立をしている人もいます。これは本当にいいことだと思います。消化器内科は緊急患者も多いですし手技が盛んなぶん、一昔前は男性主体で女性の活躍する機会が少ない分野だったと思います。しかし、消化器内科の仕事は女性にむいていないなどというのは古くからの慣習に縛られた先入観にしかすぎません。海外に目をやれば一線で活躍している女性医師はたくさんいます。海外では消化器内科医が女性であることは特別なことではありません。医学生の半数近くを女性が占めるこの時代に、女性が参加しにくい診療科は生き残ることができないと断言します。男性と女性は平等ですが同じではありません。生物学的に違うのですから当たりまえです。突き詰めて考えれば女性の中でも違うし、男性の中でも様々な人がいます。要するに個の多様性の問題です。消化器内科では各自のキャリアパスを大事にしています。結婚や妊娠・出産にも臨機応変に対応してぜひキャリアパスを継続してほしいと思います。

【消化器内科のPPI】
 最後に、私は、杏林は臨床メインの大学病院でいいと思っています。それが求められているとも思います。ただそれは、症例をたくさん持っている、検査や治療をたくさんやっている、テクニカルに長けている、ということだけを意味するのではありません。時代を変えるという情熱(passion)、専門家としての矜持(professionalism)、杏林や日本の医療の将来を想像する力(imagination)を兼ね備えた集団を目指したいと思います(これを消化器内科のPPIと呼ぶことにましょう!)。

2020年4月1日
杏林大学医学部消化器内科学 教授
診療科長
内視鏡室室長

久松 理一(ひさまつ ただかず)

消化器内科に興味をお持ちの学生および医師の皆様へ

森 秀明

森 秀明

 杏林大学医学部消化器内科学(旧第三内科学教室)は初代教授である青柳俊雄教授(現名誉教授)が立ち上げられ、斉藤昌三教授(現名誉教授)、髙橋信一教授(現特任教授)に引き継がれ、2015年4月には新たに久松理一教授が就任され、今日に至っております。

 私どもが専門にする消化器疾患は内科疾患の中でも患者さんの数が多い領域で疾患も多岐にわたり、新しい検査法や治療法などの開発が日進月歩で進んでいる分野です。このため当科では専門分野を消化管感染症グループ、小腸大腸グループ、胆膵治療グループ、消化管治療グループ、肝臓グループに分け、日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化管学会、日本肝臓学会、日本超音波医学会などの認定指導医や専門医の指導の下、日々の診療と研究にあたっています。

 また消化器内科医が種々の消化器疾患を診断するにあたり、上部・下部消化管レントゲン検査および内視鏡検査、カプセル内視鏡検査、超音波内視鏡検査、腹部超音波検査、腹腔鏡検査、肝生検、経皮的胆道造影、内視鏡的逆行性胆道膵管造影など、多くの検査の手技や読影を習得する必要があります。さらに近年では肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法、総胆管結石に対する内視鏡下砕石術,肝膿瘍・急性胆嚢炎・閉塞性黄疸などに対するドレナージ術、胃腺腫や大腸ポリープのみならず早期食道癌・早期胃癌などに対しても内視鏡治療が行われるようになり、消化器内科医の役割はますます重要になっております。当科に入局された研修医の先生方はこれらの消化器領域の検査の手技や読影、治療手技を習得するとともに、前述した各学会の専門医や認定医を目指して研修して頂いております。

 また当科の特徴のひとつとして今までに200名を超える同門の先生方が在籍され、当科を退職された後、全国各地で活躍し高い評価を頂いている点があります。当科で研修され、将来、地域医療の担い手になりたいと思っておられる学生や研修医の方々にとっても、全国に同門の先生がおられることは大変心強いことと思います。

 杏林大学は2020年度に創立50周年を迎え病院の建物や設備も充実してきました。これらの建物や設備などのハード面とともに発展しなければならないことは、勤務している私たち医師や看護師、パラメディカル、病院で働いているすべての方々を含めたソフト面のさらなる充実だと思います。現在、医師を目指して努力しておられる学生諸君、またすでに医師になり初期研修をされている先生方、さらに後期研修を別な病院でされた先生方もぜひ当科に入局され、ともに消化器病学を研鑽していきましょう。消化器内科に興味をお持ちの学生や医師の皆様方はぜひ当科の医局にご連絡ください。私たちは本学の建学の精神である真・善・美を理解・実践できる良医を育成し、日本の医療のさらなる発展に寄与できるよう努力していきたいと思います。

これまでの50年の歴史と新たなる50年の歴史のために!

2020年4月1日
杏林大学医学部第消化器内科学 臨床教授

森 秀明(もり ひであき)