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杏林大学医学部 第三内科学教室 消化器内科
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教授挨拶

3年間の総括と今後の進むべき道

久松 理一

久松 理一

この4月から新年度を迎えます。まず、日頃よりご指導いただいているOB・OGの先生方に感謝申し上げます。また臨床、研究、教育に協力してくれている医局員の皆さんに感謝します。

さて、2015年4月に赴任し、2016年から教室主任を任され、計3年たったことになります。そこでこの3年間を総括し、今後の課題と杏林消化器内科の進むべき道について考えてみたいと思います。

  1. 「医は仁術」、これは不変である
  2. 考える医療をすること、医学はまた科学でもある
  3. 井の中の蛙になるな、世界は広い、外に出ること
  4. 挑戦すること、変わることを恐れない
  5. 限界を自分で決めない
  6. 仲間を大切にすること
  7. 最後までやり抜き、形に残すこと
  8. 異種格闘技はしない、勝負するなら同じ分野で!
  9. 一人で無理をするな、仲間に助けを求めなさい。
  10. 自信を持ちなさい、そして母校を愛しなさい

これが教室主任となった当時に掲げた10か条です。これに関しては今でも変わってはいません。今一度、思い返していただきたいと思います。

教授着任の時の面接で『いきなり研究論文を大量生産することは難しいけれども、症例を大事にして論文報告することはすぐにできる。まずはそこを目標にする』と宣言しました。その点では消化器病学会や消化器内視鏡学会の関東支部例会でほぼ毎回(1回だけ飛んだのがすごく残念!)中堅が指導し若手が演題を発表してきました。どの発表も中身の濃いものだったと思います。幸運にも着任早々菊地君の内視鏡学会関東支部例会での受賞に始まり消化器病学会関東支部例会3連続受賞(宮本、和田、佐藤君)、今年の小栗君の最優秀演題と関東地方会での杏林のプレゼンスは間違いなく上がっています(この文章を書いているときに内科学会関東地方会で平塚君が奨励賞受賞のニュースが入ってきた!)。この点、ずいぶん消化器内科は変わったと思います。できる限りいい症例を突き詰めて発表しようとする姿勢が生まれつつあると思います。賞を逃したときに指導者が残念がる姿勢が出てきたのは、賞を取るくらいのつもりで本気で発表するというのが自然と身についてきた証拠でしょう。

*関東支部例会での杏林消化器内科の受賞演題一覧

そして症例報告の英文論文化も徐々に実現するようになってきています。

Morikubo H, Saito D, Miura M, Sato T, Minowa S, Ikezaki O, Mitsui T, Sakuraba A, Hayashida M, Fujiwara M, Tokunaga K, Shibahara J, Mori H, Masaki T, Kawai S, Hisamatsu T. A Case of an HIV-infected Patient with Confirmed Overlapping Complications of Severe Amebic Colitis and CMV Enteritis. Intern Med. 2018 Feb 28

Hisamatsu T, Ohno A, Chiba T. Linked Color Imaging identified UC Associated Colorectal Cancer. A case report. Dig Endosc. 2018 Mar;30(2):267.

Wada H, Hayashida M, Sato T, Minowa S, Ikezaki O, Mitsui T, Miura M, Ohmori Y, Saito D, Sakuraba A, Kamiichi H, Tokunaga K, Mochizuki M, Shibahara J, Mori H, Hisamatsu T. A Caucasian American patient with celiac disease diagnosed in Japan and successfully treated with a gluten-free diet. Clin J Gastroenterol. 2018 Feb;11(1):23-28.

 

さらに現時点ではまだPubMedで見ることはできませんが、斎藤大祐 助教がオリジナルの臨床研究を論文化しています。夏前にはIntestinal Research誌に掲載されるはずです。
また基礎研究の分野でも2017年度杏林学園共同研究プロジェクトに課題が採択され大学院生の關君が薬理学教室櫻井裕之教授のご指導のもと研究に励んでいます。今や彼女はアフリカツメガエルの卵に遺伝子導入する技術を習得しています。彼女の研究ノートはなかなかによくできていてるので興味のある人はぜひ一度見せてもらうといいでしょう。

このように3年間のスタートとしてはまずまずかなと思います。しかし、ここからが険しいところになります。課題を一つずつあげて検討していきたいと思います。

1.症例報告の論文は100%でなければいけない

上述のように少しずつ形になってきていると思います。ただ、まだ100%ではありません。杏林消化器内科では症例報告はすべて必ず論文として残す、そうでなければ発表の意味なし、というつもりでやっていただきたいと思います。若手の先生方はぜひ自ら手を挙げて症例報告をして論文執筆にチャレンジしてください。極論を言えば、日本で一番数多く症例報告を英文で出している病院、を目指してください。基礎研究は他大学に今は負けるかもしれません、でも症例報告には研究費もシステムも伝統も関係ありません。優れた臨床的視点と熱意だけあれば可能です。自分の名前が記載された論文を手にした時の喜びを皆さんに味わっていただきたいと思います。そして指導者の先生に伝えたいのは、症例報告の論文化が指導できないようでは臨床研究の指導はまず無理だ、ということです。指導者としての第一歩も症例報告からはじまるということを肝に銘じてください。

2. 各臨床グループで継続的に行っている臨床研究テーマを持っているか?

学会の抄録締め切りが近づいて慌てて無理やり演題を出すということを続けていたら、何年たっても何人患者を診ても意味のあるデータは出せません。自分たちの分野で何がわかっていないのか、何を明らかにするべきなのかを(これをクリニカルクエスチョンという)、チームで真剣に議論し臨床研究を組み立てねばなりません。それこそが大学病院に課せられた使命です。クリニカルクエスチョンが浮かばないということは、その領域がもう先がない、もしくは考えて仕事をしていない、のどちらかです(実際には完成された領域なんてそうそうないので、たいていは後者)。医局員の皆さんには『考えて仕事をしなさい、マシンになるな』と伝えたいと思います。大学病院というところはただガイドラインに従って数をこなしていればいいというところではありません。ガイドライン改訂に使用される新たなエビデンスを創出するところです。試験管を振る必要は必ずしもないけれど、何かを明らかにしようとする姿勢が大事です。例えば内視鏡はよく挿入手技とか治療手技に話がいきがちですが、本当の専門医が目指すところはそこではありません。指導者は特にその点を忘れないようにしてほしいと思います。

3. やりやすいことに逃避しない。

以前、頭の上にある壁を打ち破れ!といったことがあります。壁ですから当然、そう簡単にはいきませんしストレスも大きいです。しかし、そこで本質から目を背けて楽な方に逃避して自分をごまかしてはいけないと思います。各自、もう一度『自分が本当にするべきこと挑戦するべきことは何か?』と自問してみてください。課題は明確なはずです。コラムにも書きましたが予定調和や馴れ合いの世界に逃げ込まないように。壁の打破にはエネルギーが必要でそこには競争や議論が当然生じてきます。それが健全なのです。

4. 大学病院のスタッフであるということを真剣に考える。

スタッフ(任期助教以上)の先生方、そこを目指している若い先生方に伝えたいのは大学病院のスタッフでいることの意味です。大学病院のスタッフというのは医師(臨床)であり、教員(教育)であり、研究者(研究)を兼ねています。そこには枠があり、限られた人しかそこに就くことはできません。したがって大学病院のスタッフとなったからには臨床・教育・研究のいずれかの分野で自分の課題を見つけて活躍しなくてはいけないのです。どこの大学病院も決して給料が高いわけではありません。それでも大学病院のスタッフを目指す人が多いのはそこでしかできない何かがあるからです。日常の臨床業務を行いながら、外勤に行き、(生活費を稼ぐためには仕方ない面もあります)、院内のいろいろな係をこなしていく、確かに一般病院の医師ならそれでいいかもしれませんが、大学病院のスタッフとしては不十分です。仕事は多くてキツイし、責任も重大、べら棒にリッチなわけでもない、科研費だって書かなきゃいけない、面倒なことばかりです。そう、大学病院のスタッフというのはおいしくないのです。でも最先端の医療のスペシャリストとして頼りになる存在であり、教育者でもあり、世の中を変えていく資格を持った人たち、それが大学病院のスタッフです。スタッフ自ら積極的に研究発表や論文執筆をしていく姿勢を見せてこそ下に対する説得力が生まれると思います。スタッフが夢と情熱を持って働いている姿を見せることが最大の勧誘です。

最後に、昨今の働き方改革についての話をしようと思います。たしかに医師の世界は古い価値観がいまだに残っており改善するべき点は多いと思います。無意味な長時間労働や自らの生活や健康を犠牲にすることが美徳とされるべきではありません。この点は改善されていくべきです。消化器内科でもいくつかすでに改革が始まっています。多様なキャリアアップ可能な教室であってほしいし、女性が働きやすい医局であってほしいと思います。 我々医師が扱っているのは人命であり人々や社会の健康です。また生命科学というものを扱っている科学者でもあります。その点はプライドと責任感は持っていてほしいと思います。そうであれば例え時代が変わり労務環境が変わったとしても本質を見失うことはないでしょう。自分はブラックジャックに憧れて医師になりました。そこには誇り高く、困難に挑戦する医師像がありました。医師であることは特別なことなのだ、自分はそう信じています。

平成30年4月1日
杏林大学医学部第三内科学教授
消化器内科診療科長
内視鏡センター室長

久松 理一(ひさまつ ただかず)

消化器内科に興味をお持ちの学生および医師の皆様へ

森 秀明

森 秀明

杏林大学医学部消化器内科は初代教授である青柳俊雄教授(現名誉教授)が立ち上げられ、斉藤昌三教授(現名誉教授)、髙橋信一教授に引き継がれ、平成27年4月には新たに久松理一教授が就任され、今日に至っております。

私どもが専門にする消化器疾患は内科疾患の中でも患者さんの数が多い領域であり、疾患も多岐にわたっております。このため当科では専門分野を上部消化管疾患、下部消化管疾患、肝疾患、胆・膵疾患に分け、日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化管学会、日本肝臓学会、日本超音波医学会などの認定指導医や専門医の指導の下、日々の診療,研究にあたっています。

杏林大学医学部消化器内科は初代教授である青柳俊雄教授(現名誉教授)が立ち上げられ、斉藤昌三教授(現名誉教授)、髙橋信一教授に引き継がれ、平成27年4月には新たに久松理一教授が就任され、今日に至っております。

私どもが専門にする消化器疾患は内科疾患の中でも患者さんの数が多い領域であり、疾患も多岐にわたっております。このため当科では専門分野を上部消化管疾患、下部消化管疾患、肝疾患、胆・膵疾患に分け、日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化管学会、日本肝臓学会、日本超音波医学会などの認定指導医や専門医の指導の下、日々の診療,研究にあたっています。

また消化器内科医が種々の消化器疾患を診断するにあたり、上部・下部消化管X線および内視鏡検査、カプセル内視鏡検査、超音波内視鏡検査、腹部超音波検査、腹腔鏡検査、肝生検、経皮的胆道造影、内視鏡的逆行性胆道膵管造影など、多くの検査の手技や読影を習得する必要があります。さらに近年では肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法、総胆管結石に対する内視鏡下砕石術,肝膿瘍・急性胆嚢炎・閉塞性黄疸などに対するドレナージ術、胃腺腫や大腸ポリープのみならず早期食道癌・早期胃癌などに対しても内視鏡治療が行われるようになり、消化器内科医の役割はますます重要になっております。当科に入局された研修医の先生方はこれらの消化器領域の検査の手技や読影、治療手技を習得するとともに、前述した各学会の専門医や認定医を目指して研修して頂いております。

また当科の特徴のひとつとして今までに200名を超える同門の先生方が在籍され、当科を退職された後、全国各地で活躍し高い評価を頂いている点があります。当科で研修され、将来、地域医療の担い手になりたいと思っておられる学生や研修医の方々にとっても、全国に同門の先生がおられることは大変心強いことと思います。

杏林大学は創立50周年に向けて病院の建物や設備も充実してきました。これらの建物や設備などのハード面とともに発展しなければならないことは、勤務している私たち医師や看護師、パラメディカル、病院で働いているすべての方々を含めたソフト面のさらなる充実だと思います。現在、医師を目指して努力しておられる学生諸君、またすでに医師になり初期研修をされている先生方、さらに後期研修を別な病院でされた先生方もぜひ当科に入局され、ともに消化器病学を研鑽していきましょう。消化器内科に興味をお持ちの学生や医師の皆様方はぜひ当科の医局にご連絡ください。私たちは本学の建学の精神である真・善・美を理解・実践できる良医を育成し、日本の医療のさらなる発展に寄与できるよう努力していきたいと思います。

平成28年4月1日
杏林大学医学部第三内科学(消化器内科)臨床教授

森 秀明(もり ひであき)